フランス プログレ

ACINTYA


・LA CITE DES DIEUX OUBLIES (1978)

1976年結成だというバンドの唯一のスタジオ作。
ヴァイオリンとキーボード中心のシンフォ……一応シンフォ……なのか? 判断に窮する一品。音自体が悪い上、どの楽器も凄く不気味な音色。音程を外している様に思える部分も多々出てくるが狙ったものなんだろうなぁ。そんなふにゃふにゃなプログレなんだがグッと盛り上がったり悲しみのメロディを奏でたりするんだからワケワカラン笑。風変わりシンフォにも、サイケでカラフルなようにも、異質さ極まって神聖なようにも感じられる。気付けば癖になってます。なおキーボード奏者のPhilippe De Canckはニューエイジ音楽の世界で活躍しているらしい。


(2015.03.17.Tuesday)


・IN LIVE (2012)

私をそのフニャフニャサウンドのトリコにしてくれたバンドの発掘ライヴ音源。1979年の録音。
あの摩訶不思議な音楽に変わりはないが、スタジオ盤より落ち着いた演奏になっており、比較的ゆったりした美しいシンフォと言える出来になってる。グチャグチャで結果的にサイケになってしまったみたいな笑える要素は減っちゃったし、長尺の同じような曲が続いてダレちゃうかも。ヴァイオリン奏者が不在なのもその原因だろうか。少し残念だがラスト曲で聞こえるフルートらしき音色でニヤけちゃったので良し!笑。古い音源ということもあってか音質はこもり気味&やや遠くで演奏しているような感じだが十分許容範囲。未発表曲アリ。


(2015.03.17.Tuesday)

ANGE


・CARICATURES (1972)

フランスのプログレを代表する存在……だと思うのだがいわゆる紙ジャケが発売されたのが2013年になってからという軽視ぶり。もしかして人気無いのか? 悲しい……
まぁそれは置いといて、これ以前にシングルがあったり、ロックオペラのライブをやったりしてたそうだが初めてアルバムがコレ。異界の扉が開かれたかのごとく不気味な音が充満していて、独特のおおらかさやコミカルさもあるが、どんな場面が描かれようと現実ではなく異世界での出来事を見ているかのようだ。幽霊が出てきそうな古めかしい怖い音。ボーカルはこの頃から既にド迫力。時折出てくる幻想的なフルートが癒してくれるのもいいなぁ。ハッキリ言って音は悪いと思うがそれが不気味さに繋がっていて気にならないし、これは名品です!
ボーナストラックのシングル曲も思わぬ出来の良さにビックリさせられる。覚えやすいメロディのポップさとシンフォのバランスがとっても良い。


(2015.01.17.Saturday)


・LE CIMETIERE DES ARLEQUINS (1973)

『道化師たちの墓所』という邦題のアルバム。
いきなりシャンソン歌手ジャック・ブレルのカヴァーで始まる。これがバンドにとって大いに意味のある曲らしいのだが、特に耳を惹くわけではないかな。 2曲目からは前作同様の怖いプログレが展開していきます。ただ若干光が差しているというか、明るい部分が増えたか? だいぶ整理され、前作のあの雑多な迫力も減ってコジンマリしちゃったと言えるかもしれないが、退屈では全くない。キーボードの震え響く異様な音はマジで精神に来る危険な香りがたっぷり。5曲目のインスト曲なんか凄まじく不気味で良い! というわけで本作も十分満足できる出来です。ジャケットアートはジャック・ウィルスという画家のMonument Stellaireという絵で、この頃のANGEの不気味プログレによく嵌っていて印象的ですね。


(2015.01.17.Saturday)


・AU-DELA DU DELIRE (1974)

『新ノア記』なる邦題の作品。
前作までの危険な暗さみたいなのは大きく減り、いわゆるロックらしいカッコ良さがハッキリと出ている。でもそれを萎びた空気が包んでいるため、しっかり独自性がありますね。冒頭のヴァイオリン(エンジニアが弾いたらしい)からして田舎の農村なんかが思い浮かび、一気に引きこまれちゃいます。その後はもう、ロックらしさと幻想性と迫真のボーカルで一気に聴き通すのみ! 怖さを捨てた彼らが作り上げたシンフォニック・ロックの名盤です。ところで今年2015年なわけですが、砂糖や塩の生産量は大丈夫かしら?(笑)


(2015.01.26.Monday)


・EMILE JACOTEY (1975)

邦題は『エミール・ジャコティのお伽話』
タイトルにもあるエミール・ジャコティ(発音的にはジャコテーが正しいらしい)とは、ボーカルのクリスチャン・デカンの姪の知り合いの老人だそうで、本作は彼が語る小話を元に作られたものとなっている。音楽的には前作にもまして堂々たる物となっており、ハードなシンフォから幻想的なアコースティック楽器が目立つ曲までドラマ性豊かな曲を堪能できる。こじんまりした部屋で話を聞かせるジャコティー老人の絵からはちょっと想像できない壮大で劇的な傑作!


(2015.02.27.Friday)


・PAR LES FILS DE MANDRIN (1976)

邦題は『マンドランの息子たち』
本作を初めて聴いたのは簡易なブックレットしかついていない輸入盤を買った時で、なにやらサーカスの話というのはわかるが、曲のタイトル見て「月の巨人」とかってどういう話なんだろう?と想像を膨らませた。日本盤が出て、対訳を読んでようやくわかったのだが、なんというか……うん、ヒッピーが世の不条理に抵抗して傍迷惑な行動して逃げてオカルトにハマってニューエイジビジネス (疑似科学ビジネス?) 始めるみたいな?。違うか笑。なんにせよセコイ話でしたわ。音楽的には随分と落ち着いたというか、派手な部分がなくなりひたすら物語を描くのに終始した感じでしょうか。一つ先へ進んだ気もするし、地味で退屈になったとも思う。あくまで前作と比べての話で、十分楽しめる逸品ではある。


(2015.03.03.Tuesday)


・GUET-APENS (1978)

ライブアルバム『TOME VI』を挟んで発表されたアルバム。邦題は『異次元への罠』
初っ端から今まで以上に深みある幻想を描き、ボーカルもシアトリカルさたっぷり、まさに色んな物が極まった作品と言えそう。ブルージーな汗臭ロック曲 (3曲目) は個人的にはいらないが、こんな曲にしても後半はおかしな明るさ (いや、暗さか?) があって面白いかもしれん。ラストの大曲は常に狂気をはらんだ威厳すら感じる名曲。やはり本作も名盤でしょう。


(2015.03.25.Wednesday)


・VU D'UN CHIEN (1980)

ギタリストとベーシストが変わっており、そのためか以前とはだいぶ音が異なっている。
ギターが大変ソリッドな音になっていて元気いっぱいのハードロック要素が強まった感じがする。こうも脳天気に明るいのは苦手ではあるが、前作までの美しい幻想が絶妙に合わさってくるのでやっぱり今作も素晴らしいなぁ。ボーカルも完璧です。元々はキーボード奏者のソロアルバムの予定だったそうだが、それにしてはギターが目立ちすぎてキーボードが引っ込んでいる印象ではある。


(2015.08.22.Saturday)


・MOTEUR! (1981)

うーん、もう80年代だもんね。そらそうなりますわって作品。ポップ化が一気に進み、キーボードの浮ついた軽さなんかはいかにも80年代ポップだ。ボーカルも前作までとは比較にならないくらい遠慮した歌い方になっていてちょっとつまらん。とはいえ確かにポップさが目立つものの、独特の演劇性なんかはしっかり活かした出来になっていると思う。可愛らしく美しい3曲目なんかはまるで妖精の森を描いたかのようで好き。続く4曲目がモロハードロックな始まりでその落差も面白いといえば面白いか。この曲は意外なほど緩急ある展開を見せてくれて良いです。そして9曲目は初期とさほど変わらない出来の名曲。うん、なんだかんだでやっぱり好きだ!笑


(2015.08.22.Saturday)


・TOME VI (1977)

初めてのライブアルバム。邦題は『第6巻 (ライヴ 1977)』。1977年3月26日、パリでのライヴの模様を収録したもの。
聴いてビックリ。スタジオ盤より断然パワーアップした部分も多い。特にボーカルの表現力と迫力には感服するしかない。ライヴならではの楽しみとして、Francis Decampsが歌う未発表曲もある。しかも凄くいい曲だしこれだけでも買う価値はあるかも。


(2015.03.25.Wednesday)

ARACHNOID


・ARACHNOID (1978)

『アラクノイの憂鬱』なんて邦題が付いたこのアルバム、初めて聞いた時あまりに脅迫的な音に釘付けになってしまった。この混沌ヘヴィさ、暗さ、知性を持ちし獣 (厨二) みたいなボーカル、それでいて統一された世界観は途方もない満足感を与えてくれる。特に素晴らしいのが2曲目の「Piano Caveau」。これほど闇の世界の住人気分を味わえる曲はちょっと他には無いぞ。必聴盤です! ボーナスでライブ音源など収録されているのですが、日本盤ブックレットに書かれていることが滅茶苦茶です。曲数すらあってないし……。


(2012.10.15.Monday)

ATRIA


・BOULEVARD OF BROKEN DREAMS (1992)

元気で軽快なシンフォを聴かせてくれるバンド。
少しクセのある声ながらもポップに歌い上げるボーカル含めちとプログレ・ハード寄りなんだけど、幽玄シンセバックにミステリアスに歌われるパートも織り込まれており退屈さを感じさせない工夫は見られる。躍動感あるギターソロ等カッコイイメロディも満載だし。ただ、どの楽器も音色がイマイチ地味でなにか凄い物を表現出来ているとは思えず、小粒だけど憎めないってレベルでしかないかな。


(2013.03.13.Wednesday)


・HIDE (1996)

ボーカルにちょっとシアトリカルさが出た気がするアルバム。プログレ・ハード的でありながら、いかにもプログレらしい仄暗いパートを目立たせる辺りは変わってないね。でも、やや軽薄だった前作よりもすごくしっかりしたサウンドになった。引き締まってます。これだけでだいぶ好印象になったなぁ。思案する部分もありつつ、扇情的なメロディが押し寄せてくる5曲目「Learning To Fly」がこのバンド一番の曲かな。15分があっという間です。アルバムラスト、延々とギターソロが続くも聴き手を感動させるほどのものではない辺りは惜しいなって感じ。


(2013.03.13.Wednesday)

CLEARLIGHT


・VISIONS (1978)

キーボード奏者のCyrille Verdeauxのプロジェクト。
このCyrilleって人、後にクンダリーニがどうとか言い出すような人なんで、本作もなにやら東洋っぽい感じがある。でもまるで本格的ではなくて、麻薬に彩られた如何にも当時の西洋人が想像しがちな幻想としての東洋って感じ。それ故クラシカル、ファンタジックでもあり、聴き手は光り輝く旋律に身を任せるのみ。Cyrilleの嗜好からしてニューエイジ、ヒーリング的な感じもあるが、全く眠くならない。Didier LockwoodDidier Malherbeといった名の知れた参加者によるソロ回しなど壮大に展開してゆく様が圧巻の「Spirale D'amour」、ミニマルかつコミカル、あまりに不思議な質感で印象に残る「Fullmoon Raga」、流れるように哀感あふれるメロディを描く「Guitare Elevation」、トランス感抜群の「Cristal City」等、印象深い曲が沢山。シンフォ、サイケ、ニューエイジ、様々なファンに対応する傑作でしょう!


(2013.07.14.Sunday)

CYRILLE VERDEAUX


・SOLAR TRANSFUSION (2004)

CLEARLIGHTそのものとも言えるCyrille Verdeauxのソロアルバムで、Kundalini Operaなるシリーズのひとつ。アルバムタイトル以外に『Manipura』とも題されている。
さてこのシリーズ、聴く事でチャクラのチューニングを助けてくれるんだそうで、いかにもなニューエイジ系のそういう音楽だと思ってたんですが、意外にしっかりドラムが入ってるし (打ち込みかもしれんが)、派手にバイオリンが弾かれたりと面白い。テクノなリズムの曲もあるけれど、聞こえてくるメロディはCLEARLIGHTと変わらないものだし、東洋思想趣味もネタとしては十分楽しめます。まぁ、CLEARLIGHTほど夢想を掻き立ててくれる深みは無いかもしれない。


(2019.09.16.Monday)

DELIRED CAMELEON FAMILY


・DELIRED CAMELEON FAMILY (1975)

Visa De Censure No Xなる1967年制作の映画のサントラ。2008年にキャプテントリップから出た再発盤を聞きました。邦題は『錯乱したカメレオン一家』。録音は1975年ということで時系列が合わないなーと思ったら、元はサイレント映画で一旦オクラ入りになって初公開が1976年らしいから、その時に音楽が作られたってことのよう。
曲を作ったのはMUSICA ELETTRONICA VIVAIvan CoaquetteCLEARLIGHTCyrille Verdeauxで、特に後者の色がよく出ているように感じます。サイケな空間を飛び回る美しいピアノにウットリですよ。時代を感じるコズミックな作品だし、10分を超える大曲ではジャズ風のギターからサックスから何から何まで使って脈絡なくどんどん移り変わっていったりして (しかも若干曲間らしきもあるし) 興味のない人に聞かせたらなんでこれを一曲にした?と首をひねってツッコマれることは必死、でも一つ一つはちゃんと曲として出来ているし普通に音楽として聞くことができる。女性ボーカルなどアメリカンでファンキーなところもあって、CLEARLIGHT関連でこんな音が聞けるというのも面白いな。もちろん全体としてサイケでコズミックでトリップ感満載で、でも美しさに浸れる音楽は頭を鎮めたいときなどには結構向いているし最高ですな!


(2021.02.14.Sunday)

ELOHIM


・MANA PERDU (1983)

後にHECENIAに参加するメンバーも居るバンド。バンド名は旧約聖書から? それともラエリアン?
いかにもフランスらしいボーカルが主張するサウンド。この手の代表はやはりANGEMONA LISAだと思いますが、このバンドはあそこまで演劇的ドラマ性はなく、わりあい洗練された音を流れるように聴かせてくれる。この洗練は聞き様によっては薄いと捉えられてもおかしくないけど、美しいサウンドで私は好きだな。単発のフレンチマイナーシンフォってことで敬遠せず聴いて欲しいアルバムですよ!


(2012.07.06.Friday)

FLAMEN DIALIS


・SYMPTOME-DEI (1979)

古代ローマの木星を司る神官から取られたバンド名が興味を引く。
メロトロン多用盤として一部では有名な作品だったとか。感触としてはエレクトリック系プログレに近いものがあって (一瞬SANGIULIANOみたいに聴こえたりも)、確かにメロトロンは随時聴こえてきますが特徴的なのはシンフォニックに盛り上げるために使うのではないところ。とにかく暗い! 観客をイヤ〜な気分に突き落とす映画の音楽といった趣。これはこれで有用な使い方だと思う。一方でメロトロン以外のキーボードがチープな音で面白いメロディを紡いでおり、暗さと不思議なメロディの組み合わせがなんか可愛らしい。オリジナリティー溢れる世界を描いた名作。


(2012.07.07.Saturday)

KOURTYL


・KOURTYL (2006)

MAGMAStella Vanderの息子要するプログレ・メタルという触れ込みで登場したバンド。その人脈からか、SEVENTHのサブ・レーベルから出ている。
いかにもプログレ・メタルといったテクニカルでガチガチした音像ではなく、若干気怠げなオルタナ風の音。ドスを効かせつつ、やはりやる気無さげでもあるボーカルはなかなかカッコイイし、それなりにヘヴィなギターで暗さを纏った楽曲も心に沁みる。親バカなのか、ゲスト参加しているStellaの亡霊のように響く声も印象的。個人的にそれほど興味のある音楽性ではないが、フツーにカッコイイですよ。


(2014.02.08.Saturday)

MIZMAR


・MUSIQUE DES CONTES DE LA MAIN GAUCHE (2007)

AMETHYSTというジャズ・ロック系バンドのキーボード奏者Rodrigue Lecoqueのプロジェクト。
現代的な打ち込みリズムを用いつつ、ジャジーだが冷たく薄靄がかかったような風景を表出する静かなサウンド。無駄にオサレなフランスらしさが効きつつ、全体にメロウな味があるのが良い。


(2013.10.23.Wednesday)

MONA LISA


・L'ESCAPADE (1974)

『脱出』という邦題で、これがデビューアルバム。
音はイマイチ、演奏もフラフラで普通は高く評価できるものではないんだけど、どこかゴシック・ホラー小説のような空気のある本作の表現にはこの音がピッタリとハマっている。壊れかけのオルゴールから聴こえてくるかのエリーゼのためになんか、ホント雰囲気あるなぁ。あの世から響くような音は怖いけど取り込まれてしまう。ショボくとも欠点にならなかったのはこういうホラーで不気味でなお美しい曲作りをしたからといえる。それがそのままオリジナリティになってるし、私は大好き。


(2013.09.11.Wednesday)


・GRIMACES (1975)

邦題は『しかめつら』
いきなりシャンソン歌手Georges Brassensのカヴァーで始まるが、違和感はない。前作と同様のイメージの曲もあるが、演奏などかなりグレードアップしており聴きやすく、しかしながらホラーっぽさ、あの世感 (笑) は減ってしまった。その代わりに名作の『AVANT QU'IL NE SOIT TROP TARD』に通じる部分が既に顔を出しているが、いかんせん纏まりきってない感じ。サーカス的というか、無駄に明るい曲が目立っているのもちょっとな〜。このバンドとしてはややイマイチな出来かな。


(2013.09.11.Wednesday)


・LE PETIT VIOLON DE MONSIEUR GREGOIRE (1976)

邦題は『グレゴワール氏の小さなヴァイオリン』
演奏、ボーカル共に勢いが出て、はっきりと次作の出来の良さに繋がった感じがある一方、インストの1曲目からやけに脳天気でポジティブな曲調が目立つ。このバンドにしては意外なような、でも雰囲気は出ているような微妙な感じ。この作品の聴きどころは3部作になっているタイトル曲。緊張感あるメロディと迫力のボーカルを堪能できるスゴすぎる名曲。だもんで他の曲が霞んで霞んで……。次作との差はこういう曲毎の出来の差やろね。もちろんこの曲があるだけで名作認定ですけどね。


(2014.10.12.Sunday)


・AVANT QU'IL NE SOIT TROP TARD (1978)

フレンチ・シンフォ/ロック・テアトルの代表的バンドのひとつ。邦題は『限界世界』。LP時代はモッコリクシャおじさんとしか言い様のないヒドイジャケだったがCD化に際して変えられたらしい。元の絵もちゃんと収録されてますが。
ANGEGENESISの影響云々言われるが、その2つよりも非常にハッキリしたストレートな音。極めてシアトリカルながらあまり嗄れずよく声の出ているボーカルが素晴らしい。これだけやりきってこそシアトリカルというもんですよ! 不気味かつわかりやすい格好良さで畳み掛けるアルバム前半、やや穏やかになり、故にボーカルが際立つ後半と、全く隙が無い名盤! ロック・テアトルの完成形といっても良いのでは?


(2013.06.14.Friday)


・VERS DEMAIN (1979)

バンドの象徴だったボーカリストDominique Le Guennecがいなくなり、これまでドラムを務めてきたFrancis Pouletが歌うようになっている。GENESISといい、なぜこのテのバンドはドラマーが歌うようになるんでしょうね。
あまりにしょーもないジャケに不安がよぎる。曲も短くなり、ポップになったんだろうなぁなんて思ってましたがなかなかどうして。結構いいんですよこれが。そりゃこれまでに比べりゃシンプルだしストレートなサウンドだが、MONA LISA節は満載。ボーカルもDominiqueに引けを取らないくらいテアトリカル! ジャケの印象で敬遠していた自分が馬鹿らしいよ。


(2013.10.31.Thursday)


・DE L'OMBRE A LA LUMIERE (1998)

20年近い時を経た復活作。Dominique Le GuennecVERSAILLESというバンドのメンバーで構成。
もうどこをどう聴いてもこれぞMONA LISA!という印象しか出てきません。それぐらい素晴らしい。Dominiqueは衰えてないどころかさらに進化している! 狭い範囲ながら、緩急付いているドラマティックな音楽です。幻想を掻き立てるシンセとその背後でメロディアスに弾かれるギターなんて、お約束だけど良いものは良い。ブックレットを見ると、何故かDominiqueのみ写真じゃなくイラストが使われている。しかしその目にはしっかりとピエロ魂が刻印されており、なにやら本気を見た思い。まぁ集合写真にはきちっと写っていて、そこにいるのは赤ら顔のちょっと控えめなおじさんだが。


(2013.10.31.Thursday)


・PROGFEST 2000 (2004)

2000年に米国で行われたProgFestの模様を収めたDVD。2001年にCDも出ている (同内容かはまだ聞いてないので不明)。
ジャケもアレだが実際のステージ上でも皆変な格好をしており (特にグラサン!)、思わず噴く事必死。彼らの音楽はシリアスさとコミカルさの両面を持ち合わせているがちょっと後者に寄り過ぎじゃないですかね……。Dominiqueが様々な面白おかしいコスを見せてくれるのは当然として、他の人らはフツーでいいんじゃないんですかね。そうでもないのか!? とはいえ見所はたっぷり。電車ごっこを吹き飛ばす侍女長コスとかギタリスト扮する変態との寸劇とかそりゃもう色々。ギタリストはフルート (Dominiqueとのツイン・フルートもアリ!) や歌も披露し、特に歌声がとても良くて印象に残る。ドラムのバタバタぶりがまた心地良し。個人的に一番良かったのはDominiqueの曲中の鬼気迫る表情から一転、優しそうに喋るそのギャップ。胡散臭さ満点、でも滲み出るカリスマ性がタマランのよ。


(2013.11.29.Friday)

PATRICK BROGUIERE


・BROCELIANDE (1994)

プログレや中世といったものに影響を受けたという作曲家/マルチ奏者。
中世の夢想へと誘ってくれる曲が続くアルバムです。まぁぶっちゃけゲーム音楽みたいなもんで(笑)、聴いてて何度もあぁファイナルファンタジーにこんな曲あるよなーとか思ってました。中世ファンタジーに想いを馳せるに十分なメロディの数々が詰まってます。当然ロック色は薄いけど、いきなりソリッドすぎるギターが出てきてビックリするシーンもあったりします。


(2011.05.14.Saturday)


・MONT SAINT-MICHEL (1998)

モン・サン・ミシェルってのは世界遺産にもなってる修道院。よくテレビ番組なんかでも映りますよね。もう、ファンタジー好きのツボを付いてくるなぁ。
音楽性は特に変わらず。そうなるとメロディ勝負なわけですが、正直『BROCELIANDE』のほうが耳に残る曲が多かったかな。本作はチョット淡々としてる印象です。ラストの盛り上がりとかはイイんだけど。


(2011.05.14.Saturday)

PENTACLE


・LA CLEF DES SONGES (1975)

ベルフォールにて1971年に結成されたバンド。邦題は『夢想への鍵』
ANGEChristian Decampsがプロデュースしたことで知られるが、音的には似ておらず、ロック・テアトル系ではない。丁寧に歌われるフランス語ボーカル、幻想を引き立てるキーボード、程良い泣きを見せつつ時に派手に弾きまくるギター。これらが合わさって全体に物悲しい空気を醸すが、単純に哀愁に満ちたとか言えない雰囲気。もう一捻りある感じが素晴らしいです。フランス特有と言っていいのか、柔らかいファンタジーを堪能できる名盤!


(2012.11.15.Thursday)

SARCASME


・MIRAGE (2006)

リヨンにて90年代に結成されたというバンド。
ツイン・ギターで、1人はクラリネット兼任。女性フルート奏者 (活発なお嬢さんって感じでなかなかカワイイ) もいて、そんな管楽器が全体で聴こえるのですが力量はイマイチか。ただ音を出すというだけでチンドン屋的なパペパプー感がマヌケ。さらにギターはブルージーでちょっと汗臭いし、ボーカルはノーテンキだし、酸いも甘いも知る疲れた大人のダルさみたいなのが滲み出ていて全く私の趣味ではなかった。どこか長閑なトラッド風味がある曲だけかな、イイと思えるのは。あとはジャケね。ヴァルキリーがメンバーの魂を迎えにきたみたいなあまりにも味がありすぎるイラスト (メンバーの顔が似てなさすぎる!)、ずっと見てても飽きないな。


(2013.07.30.Tuesday)


・INSTINCT (2012)

これは思いきったなぁ、と思わずにはいられない。
ギターから汗臭さが消え、フルートと共に織り成す邪悪なヘヴィ・シンフォが主体に。ギターやフルートのこの暴れっぷりはイタリアのバンド?って思うほど。一方静のパートではフランスらしい萎びたモヤモヤ感がある。実に良い! 演奏も音質もアップしてるし、何より静と動のコントラストが際立ってドラマティックになったのが大きい。まぁ、単に私の好きな音になったってのもあるんですけど。


(2013.07.30.Tuesday)

TAI PHONG


・TAIPHONG (1975)

ベトナム系フランス人が中心だというバンド。邦題は『恐るべき静寂』
当時その泣きメロ具合が話題になったらしいですね。ストリングス系のキーボードとしっとりピアノをポイントに、ただの歌モノかと思いきやそうじゃない展開を見せてくれるのがイイ。どうでもよさげなポップ (でもどこか美学はある) からプログレ丸出しの演奏へ移ったり、やわらかすぎて崩れてしまいそうになったり。胸に突き刺さる展開されるを紡ぎまくりで素晴らしい。無理矢理なハイトーンって感じのボーカルも私は苦手なはずがこのバンドにはこれしかないって思える。バラード曲なんか声が鼓膜に悪い! ヤメテーとか思いつつ、すごい悲哀が伝わってくる声です。とても気に入ってます。ボーナストラックとしてシングル曲が収録されていますが、これは退屈な曲でした。


(2013.01.18.Friday)


・WINDOWS (1976)

カラフルなジャケがステキ。目を奪われる。
前作よりちょっと洗練されたというか、ノリよく、細かく、気の利いた演奏がだいぶ映えるようになっている。でもメロディの良さは変わらないし、前作より好き。流暢に叙情パートまで織り込んだ1曲目「When It's the Season」が名曲。ボーカルは一瞬女性かと思う。花咲く桃源郷状態の6曲目「The Gulf of Knowledge」もいいなぁ。でも一番好きなのは3曲目の「St John's Avenue」です。猫なで声みたいなので歌ってくれます。聴いていると目の前の世界が白んでいくような溶けそうな甘いメロディ。これはちょっとタマラン。ボーナストラックは甘ったるいだけのポップ。甘くても3曲目とは質が違うんだよねぇ。


(2013.01.18.Friday)

THIERRY CRUSEM


・LES COULOIRS DE L'AMER ETONNANT (2003)

マルチ奏者/ヴォーカリストによる2作目……らしいのだが、1作目の情報がちょっと見つからんな。ジャケ裏に書かれた本人のサイトも消えちゃってるし。
歌い方からして、ロック・テアトルの系譜かなと思うものの、サウンドはシンフォというよりは打ち込みなども駆使したモダンで普遍的なロックという感じ。シアトリカルさとポップ・フィーリングの上で絶妙なバランスを取るその歌いっぷりはいいと思うし、なかなかイイ曲が揃っているものの、70分もの長さを最後までダレずに聴けるほどじゃないかな。ゲストにANGEのベーシストが参加。ミックスとマスタリングはJean-Pascal Boffo


(2014.01.25.Saturday)

TIEMKO


・OCEAN (1990)

ベース不在のトリオ。
ダイナミックな演奏で無機質な旋律を振りまきながら疾走します。不穏な空気もあるし、これなら混沌としたサウンドになりそうですがさにあらず、以外なほど清涼な音です。アヴァンギャルドでも考えすぎず、とても自然な感じがあるという、かなり特異な音で結構気に入ったかな。原始時代のBGMみたいなトライバルさから神秘さと不気味さがせめぎあい、美しいピアノが舞い、天国へ昇りつめていくようなタイトル曲は名曲!


(2013.04.19.Friday)


・PARADE (1991)

今作でも無機的な音に変わりはないですが、若干華やかさが出ているかな。短い曲ばかりなので多彩な曲調を楽しむことが出来る。
エレクトロなシンセをバックに情感たっぷりに不思議な世界が描かれる4曲目「Spirale」が一番好き。この曲もけしてメロディアスじゃないのに聴いていると思わず耽溺してしまう。ホント個性的だし、このバンドを絶賛する人がいるのもわかるっちゃわかるかな。


(2013.04.19.Friday)

TRANSPERCEPTION


・COLOUR GREEN (2011)

マルチ奏者Djam Zaidiによる作品。
比較的メロディ重視のシンフォで、オールドな感じは少なく、現代的なシンフォの一つの形といったところ。特徴はスペーシーなシンセで、それが濃厚に出ている3,4曲目がとてもいい。淡々と冷めているのに派手な展開。一方スペーシーさよりもじっくり紡ぐ曲では憂いある湿り気を感じられ、あまりムチャをしないボーカルと相まって耳馴染みがいい。まぁ、スペーシーさをウリにするならもうちょいシャープさが欲しい気はします。


(2013.10.11.Friday)

VERSAILLES


・LA CATHEDRALE DU TEMPS (1991)

90年代フランスのシンフォ系では最も耳を惹くと個人的には思うバンド。後にメンバー4人中3人がMONA LISA『DE L'OMBRE A LA LUMIERE』に参加することになる。
さて、彼らの音楽はGENESIS、ANGE、MONA LISAに通ずるいわゆるロック・テアトル系。演劇的に大仰に歌うボーカルは、ナルシスティックなカッコ良さがあり、抜群の個性を有している。それでいて歌メロはとても親しみやすさがあって、つい口ずさんでしまう(フランス語はわからないけどね)。キーボードの勢いある演奏もとってもグッド。音自体はB級感があると思うけど、全く問題なし。プログレ好きなら外せないバンドですよ!


(2014.11.21.Friday)

WLUD


・CARRYCROCH' (1979)

フレンチマイナープログレの中でもなかなかの掘り出し物がこちら。
カンタベリー系ジャズ・ロック風の音色もあればフランス特有のオシャレ浮遊感もある独特のサウンド。しかしジャズに近づきすぎず、ロックならではのメロディ使いがいいのです。どことなくCARPE DIEMをよりジャジーにした感じを受けます。やはりフランスならではです。いい作品だー。


(2012.07.26.Thursday)


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